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不使用取消審判QアンドA

不使用取消審判Q&A(1)

不使用取消審判Q&A (1)

Q:一旦、登録された商標でも、登録後に使用していないときには、その登録が取消されるということですが、本当ですか?

A:本当です。不使用取消審判という制度があり、一旦、登録された登録商標について、登録後一定期間使用していないときには、その登録が取消され、商標権は消滅し、その存在を失うことになります。

 

Q:不使用取消審判制度は何故設けられているのですか?

A:商標は使用により商品や役務の出所表示機能などの機能を発揮するもので、 使用されていない商標は、商標として機能しておらず、保護すべき業務上の信用も発生していないので取消し、むしろ、使用しないのなら使用したい人が使えるようにした方が好ましいとするもので、わが国商標法は、商標の現実の使用の有無を問わず一定要件を満たせば商標権を付与する登録主義を採用しており、その弊害を是正しようとする趣旨もあります。

Q:不使用であれば自動的に取消されるのですか?

A:いいえ。請求人からの当該審判の請求があって、初めて取消されることになります。

Q:当該審判を請求する請求人には、どのような理由、メリットがあって当該不使用取消審判を請求するのですか?

A:(1)商標調査を行った結果、使用する予定の商品やサービスの範囲に、欲しいと思う商標と同一または類似の先に登録された他人の商標がある場合、その他人の商標を取消したいと考えるとき。換言すれば、自社で使いたいと思っていた商標が他社によって登録されているという場合で、しかし他社が現実に使用していないと思われるとき、当該商標を使用できる方策の一つとして不使用取消審判を考えるときです。この場合、使いたいと思っている登録商標について、商標権の譲渡(移転)や通常使用権などのライセンス契約の申出と併行して、当該移転を有利に進める為に、不使用取消審判の請求を考えるときもあります。

(2)出願後、審査の段階で先に登録された他人の商標の存在を理由に拒絶理由を通知された場合(商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶理由の場合)、当該先に登録された他人の商標の存在を失わさせて、当該拒絶理由を免れるようにする為に請求することが考えられます。

(3)他社から商標権侵害の警告を受けたものの、その商標が実際に使用されていないと思われる場合に、この不使用取消審判を請求して、商標権を消滅させ、商標権の侵害の警告に有利となるようにする場合が考えられます。

Q:不使用取消されるのは、何年以上不使用のときですか?

A:三年以上不使用の場合です。

Q:三年以上不使用というのは、何時が始期ですか?

A:商標権は設定登録により生じ、10年間の存続期間を有します。

設定登録の日を始期としてそこから三年以上不使用か否かを見てもよいですし、10年間の存続期間内での三年以上不使用か否かを見てもよいです。

Q:商標権を調査してみますと、その商標権は設定登録の日から10年近くにきており、以前はその登録商標を使用していたのですが、最近のここ3-4年間は使用していないようです。不使用取消審判の請求を待った方がよろしいでしょうか?

A:商標権は、更新しなければ、設定登録の日から10年で消滅します。商標権の消滅や更新の有無を見極めた方がよいかも知れません。

Q:商標権の存続期間の更新は、登録商標が不使用でも更新できるのですか?

A:商標権の存続期間の更新登録の出願については、①他の重複登録商標に係る商標権者等の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるか否か、②出願人が当該商標権者と一致するか否かについて審査され、登録商標が不使用でも更新できます。

商標権の存続期間が更新されたときには、更新後の登録商標について更新前及び更新後の不使用について考察し、不使用取消審判の請求の是非を考えればよいかも知れません。

 

Q:不使用取消されるのは、三年以上不使用の場合ということですが、三年以上の間に、一回使用したことがある場合にも、不使用で取消されますか?

A: 不使用取消審判の規定の商標法第五十条第1項は、「継続して」三年以上登録商標の使用をしていないときは商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨規定しており、一回でも使用したことがある場合には、不使用で取消されません。

Q:ところで、ここにいう登録商標の「使用」とは、どんな行為をいうのですか?

A: 商標法第2条第3項で定義しています行為をいいます。

その行為は次の通りです。

商品又は商品の包装に標章を付する行為

商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為

役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為

役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為

役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為

電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為

商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

前項において、商品その他の物に標章を付することには、商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすることが含まれるものとする。

Q:一回看板により広告を出しただけですが、不使用取消されないのですか?

A: 前述のように、不使用取消審判の規定の商標法第五十条第1項は、「継続して」三年以上登録商標の使用をしていないときは商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨規定しており、一回でも広告による使用したことがある場合には、不使用で取消されないとされているようです。

最も、本来の使用は、不使用取消審判制度が設けられた趣旨からは、商標の機能面から考えるべきかも知れません。

Q:商標が、日本国内では使用されていませんが、外国で使用されている場合には、取消を免れることができますか?

A:いいえ、不使用取消審判の規定の商標法第五十条第1項は、商標は「日本国内において」使用していなければならないと規定していますので、「日本国内において」使用していず、外国で使用されていても不使用による取消を免れることはできません。

Q:商標権者は使用していないが、通常使用権者が使用している場合には、取消を免れ得ますか?

A:取消を免れ得ます。不使用取消審判の規定の商標法第五十条第1項は、「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが」使用していないときと規定しており、通常使用権者が使用していれば、取消を免れ得ます。この場合、通常使用権者は、特許庁での通常使用権者としての登録の有無に関係しないようです。

 

Q:不使用取消審判の規定の商標法第五十条第1項は、「各指定商品又は指定役務についての」登録商標の使用をしていないときとなっていますが、指定商品又は指定役務について、同区分内で複数指定している場合、その区分内全ての指定商品又は指定役務について使用していなくてはいけないのですか?

A:指定商品又は指定役務についての使用に関しましては、商標法第五十条第1項に加えて、商標法第五十条第2項の規定も考える必要があります。即ち、商標法第五十条第2項は、次のように規定されています。

  「前項の審判の請求があつた場合においては、その審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」

上記から判りますように、「その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての」となっていますので、同区分内で複数指定している場合、その区分内全ての指定商品又は指定役務について使用している必要はなく、その区分内の一部でも、使用していることを被請求人(商標権者側)が証明すれば取消しを免れることができます。

Q:不使用取消審判は、指定商品又は指定役務の一部についてもその請求が可能ですか

A:可能です。商標法第五十条第1項は、「各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときと規定されていますので、指定商品又は指定役務の一部についても請求が可能です。

Q:不使用取消審判により請求人がその請求に係る指定商品又は指定役務の選択を出来ると言うことになりますが、その請求に際して注意すべき点はないのですか?

A:注意すべき点があります。被請求人(商標権者側)は、

「その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用」の証明をすればよいので、不使用取消審判請求を行う範囲如何により、取消を免れることになります。

一方、範囲が狭いと、類似の指定商品又は指定役務が残存し、せっかく、不使用取消により取消しても、被請求人から商標権の禁止権による使用の差止などを受けたりすることがあります。

このように、不使用取消審判については、全部の取消請求も可能で、又、指定商品や指定役務の一部についての請求も可能ですが、多くの場合、請求を行う側から見れば、自社の商品・役務との競合が生ずる範囲に限定すれば足りると考えられます。

Q:登録商標が登録された時のものと少し変更がなされていますが、そうした場合、登録商標の使用にならず、不使用取消審判により取消されてしまいますか?

A:不使用取消審判の規定の商標法第五十条第1項は、登録商標の使用に関し、登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標、その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)の使用をしていないときとしており、ここで規定されておられますように、次のような商標の使用は、登録商標の使用に含まれるとされています。

(1)      書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標

  1. 例えば、清朝体(かい書体)をゴシック体に変更を加えたもの。

  2. (2)      平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するもの

    であつて同一の称呼及び観念を生ずる商標

    例えば、ローマ字の大文字と小文字の相互間の使用で、例えば、

    大文字のHI-KEの小文字のhi-ke、

    又、平仮名と片仮名の相互間の使用で、例えば、

    平仮名のちゃんぴおんと片仮名のチャンピオン

  3.  (3)外観において同視される図形からなる商標

     

    Q:上記の3つの態様は例示ですか?

    A:そうです。その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標であれば登録商標に含まれます。

     

    Q:社会通念上の同一性が否定される例にはどんなものがありますか?

    A:社会通念上の同一性が否定される例には、次のものがあります。

    (1)平仮名と片仮名の相互間の使用であっても、外来語等で相互に変更することにより、特定の観念が失われ別異な観念が生ずるとき。

    例1:「チョコ」と「ちょこ」(前者はチョコレートの略称と考えられ、後者は「猪口」という観念が生じる)

    例2:「カム」と「かむ」(前者は機械装置の一種という観念が生じ、後者は「噛む」という観念が生じる)

    (2)平仮名及び片仮名とローマ字の相互間の使用であっても、平仮名及び片仮名とローマ字のいずれかに別異の観念が含まれるとき

    例1:「ホール」と「hall」「hole

    例2:「ピース」と「peace」「piece

    (3)称呼は同一だが、平仮名及び片仮名と漢字のいずれかに別異の観念が含まれるときの相互間の使用

     

    Q:不使用取消審判の請求があり得ることを譲渡交渉やライセンス交渉等の相手方の行動から察知して、その後、俄かに当該登録商標の使用(いわゆる「駆け込み使用 」)を開始すれば、商標登録の取消を免れることができますか?

    A:できません。

    上記のように、不使用取消審判においては、審判の請求の登録前3年以内に登録商標の使用をすれば取消しを免れる(商§50②)ので、不使用取消審判の請求があり得ることを、譲渡交渉やライセンス交渉等の相手方の行動から察知して、その後、俄かに当該登録商標の使用(いわゆる「駆け込み使用 」を開始して商標登録の取消 )を免れるケースが少なくなかったので、平成8年の改正により、このような駆け込み使用による登録商標の使用を排除するようにしました。従いまして、取消しは免れることはできません。

     

    Q:色彩を特定した登録商標の色彩のみを変更して使用した場合、不使用取消審判により取消されますか?

    A:色彩のみ異なる登録商標の使用は、類似商標の使用とも考えられなくはありませんが、商標法には、色彩のみ異なる類似商標は、登録商標に含まれる(70条1項)旨規定があり、不使用取消審判により取消されません

     

    Q:不使用取消審判の請求を受けたときに、商標権者が使用していなかった場合であっても、使用をしていないことについて正当な理由がある場合には、取消を免れることができますか?

    A:不使用取消審判の請求を受けたときに、商標権者が使用していなかった場合であっても、使用をしていないことについて正当な理由がある場合には取消を免れることができます。

    商標法は本来、登録商標の使用を保護の前提としていること、及び、不使用取消審判制度が設けられている趣旨からすると、登録商標の不使用につき商標法50条2項ただし書にいう「正当な理由」があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に対し酷であるような場合をいうものと解するのが相当であるとされています。

     

    Q:当該「正当な理由」の例についてはどのような例がありますか?

    正当な理由とは、天災地変によって工場等が損壊したような場合、時限立法により使用が禁止された場合等、商標権者の責めに帰すことができないやむを得ない事情があり、不使用を理由に取消すことが社会通念上酷であるような場合をいいます。

    過去に正当な理由が認められた事例について紹介します。

    (1)医薬品の製造承認申請等に関するもの

    商標登録から医薬品の製造承認申請まで約2年5か月、承認申請から承認まで約1年3か月、承認後審判請求登録日までが約4か月経過した事案(取消 2005-30759)では、特許庁は、前記期間における不使用につき、「薬事法に関わる事由によるものであって、被請求人の責めに帰すことができないものであった」として、正当理由を肯定しました。

    (2)災害に関するもの

    被請求人の営業所がインドネシアにあり、審判請求登録日前3年以内の期間中に、2度(2004年12月と2005年3月)災害があって営業所が破壊され、指定商品について登録商標の使用ができなかったという事例で、正当理由が肯定されました。

    もっともその「正当な理由」は「登録商標を使用しないことについて商標権者の責めに帰すことのできないやむをえない事情」とされており、これが認められる場合はきわめて少ないと考えるべきです。

     

    Q: 不使用取消審判を請求するのに、請求人に利害関係が必要ですか?

    A: 法人、自然人を問わずだれでも不使用取消審判を請求できます。利害関係人には限定されておりません。

    改正前の商標法では、不使用取消審判の請求人適格についての明示の規定がないことから、その反対解釈として請求人適格は 「利害関係人」に限られていましたが、改正商標法(平成9年4月1日からの法律改正)では 「何人」にも認めることとし、その旨を法文上明示しています(商§50 。)

    なお、請求人適格を「何人」にすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められません。

     

    Q:不使用取消審判において、請求された被請求人側の商標権者は、どんな使っていることの証明をする必要があります か?

    A: 不使用取消審判では、請求された被請求人側の商標権者が使っていることを証明をする必要があります

不使用取消審判QアンドA(2)

Q:不使用取消審判において、請求された被請求人側の商標権者は、どんな使っていることの証明をする必要があります か?

A: 不使用取消審判では、請求された被請求人側の商標権者が使っていることを証明をする必要があります。

この登録取消審判が請求された場合は、権利者は、ここ3年の間に登録商標を指定商品(又は指定役務)に使用していたことを証明する必要があります。具体的には、カタログやパッケージ、納品書などによって証明します。商標権について使用権が許諾されている場合、その使用権者がここ3年の間に登録商標を使用していたことの証明でもよいです。権利者側が使用を証明できなければ、請求に係る商標登録が取り消されます。

 

Q:請求人側は、どのような資料や証拠が必要でしょうか?

A:法律上は、不使用取消審判において、審判請求を受けた商標権者が、使用の事実を証明する必要があるため、不使用取消審判を請求する側が使用していないという証拠を出す必要はありません。

とはいえ、当然のことながら、何の事前調査も行わずに不使用取消審判を請求することは現実的ではありません。審判請求の前に、可能な限りの調査を行うべきことは当然といえます。

証明するための証拠としては、商品カタログ、チラシ,広告、取引書類などを提出します。

Q:不使用を証明(疎明・疏明で足ります。)する書類はどのように揃えたらよいのですか?

A:飲食店営業、喫茶店営業などでは、営業許可申請書が必要で、保健所に、その営業所の名称、屋号または商号の届出が必要で、又、変更があったときには、変更届の提出が必要で、その変更届には、「施設の名称」の記載が必要です。

当該書類から、登録商標の仕様の有無がある程度判明する場合があります。

又、 営業を休止又は再開した場合には、休止(再開)届の提出が必要になります。廃業する場合、廃業届の提出が必要になります。

当該書類からも、登録商標の仕様の有無がある程度判明する場合があります。

 

Q: 駆け込み使用である場合、その証明は、請求人がしなければならないのですか?

A:そうです。登録商標の使用証明自体は、被請求人に課せられるものですが、それが駆け込み使用であることは、請求人が証明しなければなりません。

商標権者が、譲渡交渉やライセンス交渉の申入を受けた際、相手方の行動から不使用取消審判がありうることを察知して、使用していなかった商標を急に使用し始めて商標登録の取消しを免れるケースがあったため、そのようなアンフェアなケースを排除するため、当該駆け込み使用に対しますその証明は、請求人がしなければなりません。

請求人はその証明に際しまして、被請求人の証明した登録商標の使用が次に該当することを証明する必要があります。

駆け込み期間内(請求前3月から請求の登録日まで)の使用であること。

審判請求がされることを使用者(商標権者、専用使用権者、-通常使用権者のいずれか)が知った後の使用であること。

証明方法の具体例としては、商標権の譲渡交渉等において内容証明郵便や第三者立会いの下で「当該商標登録の不使用取消審判を請求する」旨を伝えた事実を、審判の審理に過程において立証すること等であります。

 

Q: 不使用取消審判の請求で注意すべき点は?

A: 取消にかかる指定商品や指定役務は、通常、競合が生ずる範囲だけを限定しますので、その範囲を狭すぎず広すぎないようにすることが重要です。また、商標調査の結果で不使用取消を請求する場合、1つの競合する商標だけに着目して他の商標を見落とさないように、複数の重なるような権利状況になっているのかいないのかを確認する必要もあります。

不使用取消審判を請求することは、勝手に相手の権利を消滅させる手続きを開始することになるため、請求人はその商標がなくなることに何かのメリットがあることが殆どです。仮に不使用取消が失敗した場合では、商標権は存続しつづけますので、その権利範囲の使用は侵害行為にあたる場合が多いと考えられます。従いまして、不使用取消審判の請求が不成立の場合、ライセンスで何とかするか或いはその商標をあきらめることを覚悟する必要があります。

 

Q:出願後、審査の段階で先に登録された他人の商標の存在を理由に拒絶理由を通知された場合(商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶理由の場合)、当該先に登録された他人の商標の存在を失わさせて、当該拒絶理由を免れるようにする為に請求することが考えられますが、その場合の対策は?

A:その場合には拒絶理由通知に対する意見書提出期間内に意見書や上申書を提出して「拒絶理由通知に書かれていた登録商標(引例)について不使用取消審判を請求しましたこと、又、取り消しになれば拒絶理由は解消されるので、不使用取消審判の審決が出るまで査定は待って欲しい」旨を伝えておくとよいようです。
そうしないと、審査官は不使用取消審判が請求されたことがわからず、拒絶理由通知に承服したものと思って拒絶査定にしてしまうからです。

 

Q: 不使用により取消されるとどうなりますか?

A: 取消が認められば、その商標権は消滅します。不使用取消審判の請求の登録の日に消滅したものとみなされます。従いまして、自分の欲しいと思う商標との競合関係が解消され、拒絶理由の解消や自分の商標を登録することができるようになります。

取消審判における取消審決の効果の発生時は取消審決の確定したときが原則ですが、不使用取消審判の場合は、その例外として審判請求の登録日まで遡及して取消審決の確定の効果を認めるものであります。これにより、審判請求の登録日から取消審決の確定日までの不使用登録商標に係る商標権に基づく損害賠償請求等の権利行使を回避することが可能となります。

「一部の指定商品」についてのみ取り消しになった場合、残りの商品を指定した登録商標として存続します。

Q:審決に対します不服申立は?

A; 審決に対します不服申立は、次の通りです。

1)審決確定前は、取消訴訟を提起することができます(63条)。

2)審決確定後は、再審を請求することができます(57条)。

 

Q: 取消審判において使用事実を立証しなかった場合でも、取消審決取消訴訟において使用事実を立証することは許されますか?

A: 取消審判において使用事実を立証しなかった場合でも、取消審決取消訴訟において使用事実を立証することは許されます。商標権者が審決時に使用事実を証明することが取消を免れるための要件ではないからであります。審判では商標権者の不使用を立証命題としているので、審判段階で未提出の使用事実を立証する証拠を審決取消訴訟で提出することは、なんら制限がありません。

不使用取消審判においては被請求人に挙証責任があり、いずれかの指定商品役務の使用を証明すれば良いため、指定商品役務の範囲の減縮は請求の要旨を変更するものであり許されません。それを明確にするため、取消審判では特1553項を準用していません。従って、取消審判においては指定商品毎に請求を取り下げることはできません。