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先使用権QandA

先使用権Q&A

先使用権 Q&A

Q:先使用権とは?
A: 先使用権とは、特許法第79条に規定された権利で、先使用による通常実施権と称されるもので、一定の要件を充足することにより、他人の特許権が成立していても、その特許権について対抗でき、無償で事業を継続することができる権利です。

Q:先使用権が認められる要件は?
A: 先使用権が認められる要件は、特許法第79条に規定され、特許出願に係る発明の内容を知らないで、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者であることが必要です。

Q:自分が先に発明をした場合でないと、「特許出願に係る発明の内容を知らないで」となりませんか?
A:必ずしもそうではなく、自分が後から発明した場合でも「発明の内容を知らないで」となり得る場合があります。

Q:事業の準備をしているだけでは、適用されませんか?
A:発明の実施の事業の準備をしている者にも適用されます。

Q:単に頭の中で発明の実施をしようと考えたとか、実施に必要な機械購入の為に銀行に資金借り入れの申し込みをしたという程度でも、当該準備になり得ますか?
A:通常は、事業の準備にはなりません。

Q:特許権者から自分の権利を侵害しているので、我々の工場で製造している製品について、その製造を直ちに中止するように内容証明がきました。しかし、調べて見ますと、我々は、当該特許権者の特許出願に係る発明の内容を知らないで、その特許出願の際、現に、東京で、秘密網に、その製品の製造をしていましたので、上記の先使用による通常実施権を主張したいのですが、どのような証拠を提出すればよいのでしょうか?
A:その製品に係る図面や製品の仕様書や工程表などが証拠になり得ます。

Q:しかし、製品の工程表などには日付などの記載がありませんが、こうした場合にも先使用権の主張の証拠となり得ますか?
A:日付や御社の工程表であること等の確認が不充分であると、その主張をなし得ないかも知れません。
A:こういった場合に備えて、日付等を記載した公正証書を予め作成されておられると良かったですね。

Q: 具体的に公正証書とするには、どのようにすればいいのですか?
A:上記のようなその製品に係る図面や製品の仕様書や工程表などの書面がその日に存在した旨を証明する確定日付の公証を受けるとよいです。

Q:確定日付の公証により、書面などの中身も証明されるのですか?
A:いいえ、確定日付は、日付を証明するものであって、書面などの中身の真偽を証明するものでありません。

Q:中身の真偽を証明でき先使用権の確認に役立つ公証がありますか?
A:宣誓認証があります。宣誓認証は,認証を受ける本人が,公証人の前で,文書の記載内容が真実であることを宣誓する制度で、もし内容に偽りがあると偽証になり,本人は過料の制裁を受けることになりますので,単純な認証以上に真実性が担保されます。

Q:公正証書の作成は面倒でもありますが、あえて公正証書としておくメリットはなんですか?
A:特許権者に対抗して先使用権を主張する場合、裁判所で先使用権確認訴訟を提起することになります。そうした場合、かなりの費用が掛かる場合もあることを考えますと、公正証書を作成しておき、いざというときの備えにしておかれた方がよいかと思います。又、公正証書は、その原本が公証役場に保管されていますので、手持ちの謄本が紛失しても、その謄本を請求すれば足ります。更には、当初は他人との共同開発であったが、その後に別々に開発し先に発明を完成していて、出願がその共同開発者よりも後の出願であったような場合や特許にならないと思って出願していなかったら他人の特許が成立していたような場合等、特に、先使用権は秘密網に実施をしていたときに有効で、公正証書を作成しておき、いざというときの備えにしておかれた方がよいかと思います。

Q:証拠保全の目的で利用される「事実実験公正証書」とは?
A:証拠保全の目的で利用される公証に、「事実実験公正証書」という種類の公正証書があります。
開発関係資料の記録、物の製造過程や結果の記録、商品の形状や特質の記録、商品の販売状況の記録などを証拠保全する目的で利用することができます。
上記のような特許や実用新案などの知的財産権関係の証拠保全に利用でき、上記先使用権の紛争の解決に役立ちます。

Q:公正役場での公正証書の作成費用にどのくらい掛かりますか?
A:公証人手数料は、確定日付の場合現在700円です。宣誓認証は、現在1100円です。他に代理する場合、代理手数料がかかります。お見積もりします。